エリートの裏の顔



ちょうど一ヶ月ほど前のことです。


その日、3人目のお客様を見送り、

帰り支度を始めたところに、

電話がかかってきました。


その主は某県にある結婚相談所の

女性アドバイザーです。


「わたくしマリッジ○○の~」と、

かすれた切った中性的な声が聞こえただけで、

嬉しくない要件であることがわかりました。


ウチの女性会員(Iさん:38歳)と

先方の男性会員(K氏:44歳)の

交際に関する問い合わせです。


このお二人は、お見合いから

2ヶ月のお付き合いを経て、

結婚を前提とした「真剣交際」に進みました。


それから2週間後、Iさんから

「交際を終了したい」との申し出があり、

それを先方に伝えたところ、

K氏が「納得できない」と抗議したそうです。


そもそも「真剣交際」を

希望したのはIさんのほう。


自分はそれを快く受け入れたのに、

たった2週間で打ち切られるなんて、

プライドが許さない。


K氏の気持ちはわかります。


「その理由を教えて欲しい」


K氏の訴えをこの女性アドバイザーが、

そのまま私に寄越したのが2日前。


相談業者間のしきたりとして、

会員さんの交際終了の理由など、

その事情を明かすことは、双方の間で

トラブルがないかぎりは御法度です。


それを盾にその日は先方の要求を

拒否しましたが、

K氏はどうしても「理由が知りたい」と

聞く耳をもたなかったそうです。


「ルールはわかっていますが、

何とかならないでしょうか?」


板挟みになっている彼女が気の毒になり、

私はIさんから聞いている

その理由をお伝えしました。


「Kさんは異例の若さで“あの○○技研”の幹部に

なられた立派な方ということもあって

ウチのIも彼との結婚を真剣に考えたのですが・・・


彼女が言うには、

どうもKさんは、話をしても事務的で冷たく、

人間味を感じないのだそうです。

それで彼との結婚生活は難しいと・・・。

そう思うに至ったようです」


女性アドバイザーはため息をついたあと、

言いました。


「やっぱりそうですか。

おっしゃるとおりKはそういうところがあります。

私たちとの接し方もそっけないですし、

そのはしばしに“上から目線”を感じます。


今回は無理を言って申し訳ありませんでした。

この件、Kには私からうまく伝えておきます」


K氏もその一人ですが、高学歴で有能で

高収入を得ておられる、

いわゆるエリートと目される男性は、

この「お見合い市場」では引く手あまたです。


次々とお見合いのお申し込みが入り、

ご本人がその気なれば、

多くの女性と会うことができます。


そうなのですが、実際、結婚に至っているかというと、

意外にも多くの方が苦戦しています。


IさんがK氏に「人間味が感じられない」と

こぼしたように、“女性的な心理”は、

相手とつながっている感覚とか共感とか、

その関係の中に、ある種の情緒を

求める傾向があります。


かたや男性、それも一般に言われる

エリート層に属す職業や立場にある男性は、

この女性的な欲求に関心を示しません。


たとえば大企業の幹部、弁護士、

医師(特に外科医)など、


時に他人の人生に影響を及ぼすような、

厳しい決断をしなければならない人は特に、

共感や人の感情を察するということが

不得手だと言われます。


逆にそのような能力が高ければ、判断が鈍り、

結果として職務を果たせなくなるからです。


そうした見方をするならば、

社会で成功を収めるには、

「人の感情に鈍感でいられる能力」、


もっと言えば、

「人を踏み台にしても目的を果たす」

というような、無理を押し通せる

メンタルの強さが必要になるとも考えられます。


皮肉なことに、私たちは

社会的に成功している人に対して、

生き方や人間性を含め、

その人の「すべてが素晴らしいはず」と、

思い込んでしまう傾向があるようです。


そして、実際にその人に近づいてみると、

そのギャップに戸惑ったり、失望したりしてしまう。


「天は二物を与えず」と言われるように、

ある事柄に突出した能力をもっている人は、

そのぶん何かをもっていないのです。


だからこそ、「人はおもしろい」と私は思います。

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