結婚できない息子、娘にとってのありがちな母の存在



「橋本さん、今までいろいろありましたが、私、やっと結婚が決まりそうです」


先日、会員さんのN子さん(40歳)からおめでたい報告をいただきました。

彼女からこの言葉を聞くのはこれで3度目です。そう、Nさんはこれまで2回、成婚の寸前で破談になりました。それらはいずれも、N子さんのお母さんの反対によるものでした。

お相手もそれぞれ良い方々でしたし、何よりN子さん本人が前向きだったので、私としてもこれら2回の破談は残念でなりませんでした。

そのような経緯があったので、最後になってみないとこのご縁が本物かどうかはわかりません。

時を同じく、男性会員のYさん(48歳)からも「今、お付き合いしている彼女と結婚しようと思っています」という連絡がありました。

しかし、Yさんの場合も、まだこの段階では素直に祝福できません。


というのも、Yさんの「結婚します」は、「この人なら結婚してもいい」という彼個人の考えであって、彼のご両親に加え妹さんの賛成がないと成り立たないからです。つまり「お相手の女性」とって、それは一次審査にパスしたに過ぎず、これからYさん家全員のおめがねにかなわなければ、あえなく落選となるのです。

こんなカタチでお嫁さん選びをされるわけですから、Yさんのご実家は、相当なお家柄なのかと思われますが、少し昔の言い方で言うと、いわゆる「中流家庭」のお宅です。

この2人のように、いくら良縁に発展しようが、最後はきまってお母さんからの反対があり、破談になるという「負のパターン」を繰り返している会員さんが少なからずいらっしゃいます。

ご本人たちは無自覚なのでしょうが、私には子供の婚活をとおした家族間での風変わりなゲームをしているように思えてなりません。このようなご家族に対して、私は次のように思っていました。

子供にはいつまでも親に、それも特に母親に認めてもらいたい欲求があり、かたや母親のほうも我が子を自分に従わせることで、自身の存在価値を保ちたいという欲求がある。

そして、お互いが双方の欲求を満たし合う格好の機会が、子が親へ結婚の承認を伺う場面なのであるのではないかと。そうだとすれば、キリがありません。


このような破談がある度に、やりきれない思いをしてきました。

そんな時、知り合いのカウンセラーにその話をすると、こうした背景には、人間のある心理作用が働いているということを教わりました。その内容はこうです。

私たちは、幼少期に親からしつけをされる過程で、様々な教育的メッセージを受け取ります。


たとえば「しっかり勉強しなさい」「親の言うことを聞きなさい」「一度始めたことは最後までやり遂げなさい」など。

その内容の多くは、人生を生きる上で大切であると親が考えている規範や価値観です。

幼い頃の子供は判断ができないので、基本は親の言うことに従って生きようとします。心理学ではこれを「幼児決断」というのだそうです。

問題は大人になった今も、それは違うと感じる場面があっても、心理作用として、幼児期にすり込まれた親の教えに従ってしまうことです。

例をあげると、仕事をかかえすぎたがあまり、過労死に至ってしまった人は「最後までやり遂げなさい」という教えを守り抜いたことが、悲劇の原因の一つであると考えられるのだそうです。私はこの話を聞いて思いました。

N子さんやYさんが破談を繰り返していたのは、その親子関係もさることながら、この「幼児決断」の影響もあったのだと。

そうであるならば、これは人間心理の仕業ですから、本人も母も責めることはできないと、私も考えを改めた次第です。