
ある週末の夕方、長年仕事でお付き合いしている某企業の幹部のS氏が、部下の女性を連れて事務所に来られました。
彼の部下(Uさん:31歳)がご自身の結婚に関して、私の意見を聞きたいということが、その理由でした。
UさんはS氏の奨めで「大人の婚活」を読んでくれたのだそうですが、自分に当てはまる話があまりにもたくさんあったのだとか。
その中でも、第2章に書いた「母親が子の結婚の障害になる」の内容が彼女には強く刺さったらしく、自分と母の関係はどうなのか?それを確かめたいとのことでした。
彼女から実情を聞いたところ、確かめるもなにも、Uさん親子はどっぷり「共依存」の関係にあるようでした。
というのも、Uさんのお話では、お母さんは彼女が生まれてから今に至るまで、自分の思いどおりに彼女を育ててこられたとのこと。
そして、彼女自身もお母さんの言うことにこれまで何一つ反抗したことはなく、むしろ、その要望に応えることが彼女自身の喜びでもあるのだそうです。
現在、Uさんには彼氏がいて、お互い結婚を意識したお付き合いをしているとのことですが、お母さんから出されている結婚の条件は、彼氏のほうが2世帯住宅を建て、自分たち夫婦と半同居できる環境を用意することだそうです。
そんな親のエゴ丸出しのお話に対して、私にどんな答えを期待していたのでしょうか?
せっかく来ていただいたUさんには大変申し訳ないのですが、もし彼女があかね屋の会員さんだったらと思うとぞっとしました。
そんなことがあった後の週明けのことです。
「橋本さん、今回のご縁ですが私は大反対です。このお話は破談にしてください!」
今度はある女性会員さんのお母さんから、またややこしい要望をいただきました。
お嬢さんのR子さんは45歳。入会されてから約4年、ようやく良縁に恵まれ、現在お付き合いされている男性からプロポーズをされました。
もちろん彼女もそれをお受けしました。その矢先のお母さんからの電話でした。
今から4年前、そもそも結婚には前向きではなかったR子さんを「あなたの花嫁姿を見ないことには死んでも死にきれない」と、お母さんは泣き落としで、渋る彼女をあかね屋に入会させました。
そんなR子さんでしたから、入会から3年近く、まったくやる気がなく、お見合いをすることもありませんでした。
それに対しお母さんは「どうかあの子が真剣に婚活するように橋本さんから説得してください」と、しょっちゅう1人で事務所に来られては、私に訴えていました。
そして、ようやく1年前から彼女は結婚に前向きになり、10数回のお見合いを経て、いいご縁をつかんだのです。
4年前「花嫁姿を見なければ死にきれない」と言っていたお母さん。
今は「年老いた私たちを置いてこの家を出て行くのか」と、恨み言を言うのだそうです。
「大人の婚活」」でも書きましたが、たとえそれが我が子の結婚であったとしても、人は長年続けてきた日常生活が変化することに対して、これほどの心理的な痛みを感じ、抵抗するのです。
これが人間の性(さが)なのでしょうが、私がこの仕事を続ける限り、何組に1人は必ず出てくる、このような親のふるまいから逃れることはできないのでしょう。
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