
あれはたしか、先月初旬の月曜日だったと思います。
出勤早々メールを開けると、
一番上の段に「執筆依頼」というタイトルの
メールが届いていました。
送り主は大手出版社の編集者の方で、
その中身は、雑誌の悩み相談のコーナーで、
「回答者を引き受けてくれませんか?」
という内容でした。
そこには他の回答者も記されていて、
見るとテレビでおなじみの文化人の方ばかり。
そんな有名人に混じって、この私に
「悩みの相談などできるのか?」と、
しばらく迷いましたが、
こんな経験の機会もそうそう無いので、
「お受けします」と、返信しました。
それから数時間後、編集者からお礼のあいさつと
読者からの相談内容が早くも送られてきました。
相談者は茨城県在住の主婦の方(75歳)。
以下はその原文です。
「夫は今年77歳になります。
子供二人は独立して、
今は二人だけの生活です。
今まで気にとめていなかったのですが、
夫は食事をする時、「いただきます」を
一度も言わないことに気づきました。
なぜ、それに対して今まで私は
何も言わずに居たのだろう?
でも今さら言っても喧嘩になるだけと思い、
私だけ口に出して「いただきます」と
言うようにしています。
日頃、お互いに口数の少ない私たちです。
皆さんのご主人はどうなのか?と思います」
このコロナ渦で、自分も含めいろいろと大変な方が
増えている中、何と他愛のない内容なのだろう・・・。
そう考えてしまった私って
冷たい人間なのか?と思い、
安請け合いしたけど、
人様の悩み相談に回答できるか、
急に不安になってきました。
気を取り直し読み返していくと、
この奥さんは悩みを解決してもらいたいというよりも、
ご主人への不満をただ聞いて欲しい。
さらに言えば、こんなご主人にでも、
三度の食事の世話をしている自分を
誰かに認めてもらいたかったのでしょう。
私はこの奥さんがご主人のために
常に一生懸命、食事を作っておられることを
ねぎらいました。
そしてご主人のほうも、
永く連れ添った間柄だからこそ、
言葉を超えたところで奥様への
感謝の気持ちを持っている。
だから残された時間を仲睦まじく
過ごしていただきたいと答えました。
こんな回答でご本人が納得してくれるのか?
読者の共感を得られるのか?
それはよくわかりませんが、
いずれにしても世間一般の、70代夫婦の、
「よくありがちな日常」をこのようなカタチで
感じることができたのは、
私にとっては一つの発見なのではと思いました。
“結婚を阻む最大の壁は意外にも母親である”
過去に何度もこのテーマをメルマガで
取り上げましたし、著書にも、
母親が子の結婚を目前にマリッジブルーに
かかるという話を書きました。
いざ結婚が決まりそうになると
それに猛反対するお母さんは
私の感覚で少なく見積もっても
5組に一人くらいは出現します。
会員であるお子さん以上に、
私と親しくしていただいていたお母さんが、
縁談がまとまりそうになるとまるで別人なって、
私を悪人のごとく責め立てる。
そんなことが日常茶飯事的に起こります。
そのような振る舞いをするお母さんに共通するのは、
ご主人との関係があまりよくないとか、
お母さんご自身に趣味や仕事、大切な交友関係など
楽しみとかやりがいを感じる対象がないとか、
そうした「自分の世界」をもっていない、
退屈な人なのでしょう。
だから子供が結婚によって
自分から離れていくことを怖れ、
子供の幸せを壊すような
「あり得ないこと」をしてしまう。
先ほどの相談者である70代の女性にも
どこか似たような雰囲気を感じました。
人は年齢を重ねればそれだけ、
「自分の軸」といえる何かをもって生きないと
空しい日常を送ることになります。
人生が長くなったぶん、お金も健康も当然大事ですが
しっかりとした「自分」を持つことが大切だと・・・。
「悩み相談」という初体験の仕事をしてみて
改めて感じた次第です。
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