一昨年の秋、54歳で結婚した
元男性会員さんのIさんが、
先日あかね屋に顔を出してくれました。
今はもう昔と言っていいでしょうか、
4年前にNHKの番組に出演させてもらいました。、
たまたまその番組を観たことがきっかけとなり、
あかね屋に入会されたIさん。
約2年の婚活の末、ひと回り年下の女性と
縁談がすすみ、お見合いから約3カ月ほどで、
結婚が決まりました。
50代で婚活をはじめる男性は、
子供が欲しいという理由で、
30代女性との結婚を望む方が少なくありません。
子孫を残したいというのは、
男女問わず人間の本能ですから、
そう望むのはまったく自然なこと。
しかし現実には、
私たちのような業者を介した出会いの場では、
お見合いは成立しても実際に成婚にまで至るケースは、
ほとんどないといってもいいくらいです。
そういう意味では、
Iさんは希少な結婚をされた方の一人です。
しかし、当のIさん自身はそもそも子供が欲しくて、
ひと回り若い女性を求めていたわけではありません。
4,5歳くらい下の方ともお見合いをしていましたし、
それに対し執着するような言葉は、
彼の口から聞いたことがありませんでした。
人の世は皮肉なもので、
そのような「求めない人」のほうにこそ、
優先的に縁がやって来るんでしょう。
どちからというと、奥さんのほうが、
彼との結婚に積極的で、お見合いから成婚までは、
正にとんとん拍子で事が進んだのでした。
30代の女性を妻に迎えた54歳の彼が、
わざわざあかね屋を訪ねてくれたのは、
この1月に生まれたご長男の写真を
私に見せてくれるためでした。
「玉のような赤ちゃん」という表現は、
この子のためにあると思えるような、
目がクリっとした、それはそれは可愛い男の子でした。
しかし、彼が目を細めながら
“息子自慢”をしたのも束の間、
彼は大きなため息をついた後、
実は喜んでばかりはいられない、
その胸の内を話しはじめました。
「橋本さん、恥ずかしい話ですけど、
結婚する前の自分は、
本当にあきれるほど能天気でした。
今この歳で、我が子を抱けるのは
本当に幸せなことに違いはないのですが、
あと5年足らずで僕も定年を迎えます。
でもその頃はこの子はまだ5歳です。
これからは、年数が経てば経つほど
お金が必要になります。
そんな当たり前なことなのに、
婚活をしている最中は、
そんな現実があるということも、
まったく考えていませんでした。
ウチの会社は中小なので退職金といっても、
それほど多くの金額をもらえるわけでもありません。
当然、定年後もどこかの会社に再就職して
バリバリ働く覚悟はありますが、
その頃、それなりの仕事が
見つかるかもわかりませんし、
そういうことを考えると、
もうズシ~っとした重いものが肩に
のかっているようで、押し潰されそうです」
たしかに、50代を半ばではじめてお父さんになって、
その喜びは大きいものの、これから将来にむけて、
あと20年くらいは、父親として、我が子に対する責任を
果たさなければならないわけですから
相当な重圧を感じるでしょう。
「でも奥さんも子育てが一段落したら、
多少は働けるようになるでしょう?
そうやって2人で力を合わせていけば
何とかなるんじゃないの?」
「それがウチの奥さん、
“私はこれからも仕事はしないので、
あなた頑張ってね”って、本気で言うんですよ…。
「はぁ~そうなの?それは厳しいなぁ~」
と言いかけて、
その言葉を飲み込みました。
彼の奥さんは、あえてそう言うことで、
彼を老けさせないようにしているのかもいれない。
だとすれば、それもカタチを変えた
「内助の功」ではないかと、そう思ったのです。
Iさんの場合は、そもそも歳の離れた奥さんを
求めていたわけではないのですが、
実際にそうなって、めでたくお子さんも授かった。
しかし、喜びと同時にこれからの将来にむけ、
果たさなければならない責任もそれ以上に大きい。
30代女性との結婚を求めている50代男性は、
こうした現実を本当に想定できた上で、
それでも若い奥さんでなければと
思っているのでしょうか?
ご自身の高望みを手放すことなく、
着実に歳を重ねている彼らは、
そのあたりをどのように考えているのか?
一人ひとりに聞いてみたい気がします。
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